暗闇にヤギを探して 3 (3) 穂史賀雅也

暗闇にヤギを探して〈3〉 (MF文庫J)

暗闇にヤギを探して〈3〉 (MF文庫J)

 
最初に読んでからそれなりに経ちますが、僕はこの作品について二巻まではどっちかというと先輩寄りで読んでました。だから、この巻は前半面白く読んだとはいえすっきりしない感じが残ってて、それで読み返して記憶喪失について書いたりしました。
昨日久しぶりに目にして、また読み返して考えたことがあるので書きます。

ネタバレです。


先輩が最後女の子と付き合うみたいな形になって、それについて一番最初に読んだ時は、これって主人公と付き合わなかったヒロインが他の男の子と付き合ったりすると、取られたみたいで不満に思う人がいるからなのだろうか、みたいなことを思って憂鬱になってたんですが、この作品についてはそれとはまたちょっと違うと思うようになりました。


まず一つ目として、間宮さんがいい人だってことです。ミリオン先輩は、自分の望みを叶えることができたにもかかわらず、合人君のことを思って自らそれを手放すことができるすごい人です。こんなすごい先輩と付き合いたいと思った時、誰かと付き合ったままでとか、自分にとって大事なものを捨ててでも即決できないようでは、間宮さんが中盤で言っていたように「つり合い」がとれません。だからこそ彼女は、四十五秒だけ考えて、「……ええい!」って言ってそんなに簡単に割り切れないところを無理やり割り切って告白したと思います。個人的にはこの「……ええい!」がすごく好きです。


二つ目として、先輩の位置が風子の母さんにすごく近いことです。
女の子同士が付き合うのって実際にはあんまりありそうではないので、フィクションでのそれは上で言ったみたく受け手側の欲望の影響を強く受けてそうだということをたまに思ったりします。でも、先輩と同様の位置にいた風子の母さんは、その時から時間が経って、結婚したり、娘をもったりしています。つまり、この作品においては女の子同士の恋愛というのは、当人たちを縛るような必ずしも絶対的なものではないわけで。


僕自身受け手であるし、個人的には基本的には作品内での一貫性とかを重視してますが、外から影響を与えて変えてしまうという問題については、正直なところできたら避けて通りたいと思ってるんですが、この作品については主人公と付き合わなかった先輩についても大切にされていて、そういうところも好きだと改めて思いました。