とらドラ4! 竹宮ゆゆこ

とらドラ! 4 (電撃文庫 た 20-6)

とらドラ! 4 (電撃文庫 た 20-6)

「それにさ……高須くんは、月だから」


この小説って、やっぱり主人公たる竜児くんの魅力が大きいと思います。唐突で、自分の言葉で語る実乃梨の話を聞いて、聞き流したり、適当な返答をしたりするのではなく、ちゃんと聞いた上で懸命に自分の考えを伝えようとする姿勢とか、「もしかしたら、」という考えから、亜美に自分から話しかけに行くところとか。
相手のことをよく考えて、本当に相手のために行動していると思うんですよね。


幽霊から始まった実乃梨の話は、竜児くんの後に「私と同じだ?」と返すようにかなり独白に近くて、自分の中でかなり固まってしまっているものです。そして、自分の言葉で話しているので、他人に受けとられにくくなっている、つまり、分かりやすい話になっているかとか、相手に対して配慮して、気持ちを外に出すのを抑えることなどをしていないから、幽霊なんて突飛で、笑われたって仕方がない話になったり、相手から見て質量として重いものとなっています。
それに対して竜児くんは「声がひっくり返らないように、あせって震えたりしないように、竜児は慎重に声を絞り出し」て、実乃梨に合わせて幽霊のたとえを使って自分の気持ちを伝えようとしています。これって本当にすごいことだと思います。人の話を本当に理解しようと思って聞くことは難しいし、ましてそれを相手に届かせることを考えて、というのはもっと難しい。


亜美のこともそうで、亜美がもしかしたら寂しいって思ったかもしれないというのは、あくまで竜児くんから見た、「かもしれない」です。その気持ちから、「拒絶されるのも織り込み済みで」行動できる人なんて、極々稀だと思いますよ。はっきり言って、僕には絶対に無理です。


竜児くん以外にも魅力的なところはいろいろとあるんですが、竜児くんだけみてもこれだけいいわけで。とらドラ!はすっごく大好きですよ、ええ。