涼宮ハルヒの憂鬱 谷川流

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒシリーズ1作目。


ネタばれっぽいです。


キョン君はハルヒのことが本当に好きなのだなあと思いました。

「どうしてみんなそんなにハルヒが好きなんだ」
「またハルヒか、人気者だな、ハルヒ

とか。
まあ、人気者っていうのはともかくとして、みんなハルヒが好きだと思えるのは、あなたが好きだからでしょうが、という感じで。人は自分の視点で他人のことを判断してしまうものです。


他人について自分の価値観で判断すると言えば、自分が好きなものは他の人も好きに違いないっていうハルヒの考え方で、こういうのって全然関係ない人に対してまで思い込んだらただの押し付けなので、実際にそうなのかっていうのを嗅ぎ分けるセンスが大切だと思います。
ハルヒは、

「あんたは、つまんない世界にうんざりしてたんじゃないの?特別なことが何も起こらない、普通の世界なんて、もっと面白いことが起きて欲しいと思わなかったの?」

と言うんですけど、そんなハルヒの中学時代に対して、キョン君は「どこか思いつめた悲壮感にあふれていた」に違いないと言います。
悲壮感にあふれていたに違いないなんて思うのは、同じく、そうありたかったと思う人だからですよね。


で、ラストですけど、ハルヒにとっては特別でありたいと思う仲間はキョン君だけで、だからこそ逆に引き戻すことができるのもキョン君だけなのかなとも思いました。
例えば、安っぽいおもちゃを子どもが大切だと思っていたとして、それを大人がくだらないものだと切って捨てることはできないと思います。そもそもその良さがわかっていないので、その否定は他人事にすぎないところからなされるものですから。そういったことができるのは、良さと悪さの両方を知っている人だけです。「待ってるだけの女じゃないことを世界に訴えようと思った」けれども、何の回答もなかったと思っていて、自分は孤独だと思っているハルヒキョンくんみたいな人がいたことがいいなあと思いますよ。