これはゾンビですか?7 はーい、眠れるチチです 木村心一

これはゾンビですか?7  はーい、眠れるチチです (富士見ファンタジア文庫)

これはゾンビですか?7 はーい、眠れるチチです (富士見ファンタジア文庫)

羽月莉音の帝国を読んでて、これゾン最新刊ってちょっと似たところがあるなあと思ったのでそこについて。


一般的に物語はインフレーションの方向へと向かいます。力は強く人数は多く、規模は大きく。
そのインフレーションとして羽月莉音の帝国という作品は非常にわかりやすいです。一巻の後書きからして「ストーリーはまたたく間にスケールアップしていくことでしょう。一〇〇〇兆円単位くらいまでいきますから」と書かれているくらいで。つまり金銭という単位において巻を増す毎にインフレを起こしている。とはいえ、それが単純に増えているかというとそうでもないというのが面白いところなのですよ。
新しい巻辺りとかとくにそうなんですけど、スケールアップは基本的に安定的なものではないのです。動かされる金銭は増えているけれど借金もどんどん膨大な額となっている。RPGのレベルアップ的な意味でのインフレとは質が異なります。


それに今回のこれゾンって似ているよなと思って。
歩がクリスへ出した交換条件というのはクリスの呪いをなんとかしてやるというものです。そして、それを実際に行うためにはクリスより強い女王をなんとかしなければなりません。本来であればそういったことはするべきではないです。100万円のものを買うのに500万円の借金をするという行為なので。でも、今をなんとかするために、ある意味戦いを通した信用を担保にして借金して現状をなんとかするんですよね。
実際に次の巻で女王との登場が予告され、クリスから「頑張ってね」と言われます。
こういった様子を見て、ある種の物語における主人公は、雪だるま的に増えていく借金をインフレさせていくことにより辛うじて破綻させないように進むものなのかなーとか、今はないかもしれないけれどこの人にならお金*1を出せると思わせるような魅力を持っているものなのかなーとかいろいろ思ったのでした。


や、なんていうかある種の貧乏くじだろとは思うんですが実際にそれをやり遂げる様はかっこいいよなと。

*1:もちろん単純に金銭というだけではなく