遠回りする雛 米澤穂信

遠まわりする雛

遠まわりする雛

思いもよらない謎に出会い、そしてその謎のことを理解するをミステリーの目的ということに勝手にしてしまうならば。


劇的な状況の下で謎と出会うのではなく、その謎があることに気づく、あるいはあったことに気づくということもあり得ます。千反田の家の事やそれに関わる彼女の姿勢、里志と伊原の関係など、身近にあっても知らなかったことが謎を解くというプロセスや、ふとしたきっかけにおいて現れてくる。「小さな世界」のことだと思わなくもないですが、「取るに足らないこと」だとも思いません。サプライズという意味ではなくて、思ってもみなかったものを見るという意味において、意外な感じを味わうことができ、面白く読めたと思います。


「手作りチョコレート事件」で里志の語る、遠回りをするめんどくさい感じも好きです。