シフト 2―世界はクリアを待っている うえお久光

一巻の後書きで多少変わってるというようなことが言われてて、そんな変わらないかなと思っていたんですが、「流転」のラストが僕としてはかなり変わってると思うのでそこについて。


ハードカバーの方は、「絶対」という嘘をセラが言ってて、それに対して文庫の方では約束はできないけれど「きっと」という言葉を使っています。
これ、文庫の方がいいと思います。何故なら、「セピアの前で絶対など、約束など、いえるはずもないから」。絶対という事はないと分かりながらもそれでも言うことはそれはそれで意義があるかもしれませんが、自分から言えることしか言えないけれど、それでも自分が言える精一杯を言うというのは好きだと。


それと、指きりというのも良いですね。
ハードカバーで大事なのは、約束ではなく、約束をしたその気持ち、永遠ではなく一瞬です。このこと自体は文庫でも同じ。でも、文庫でされた指きりは「未練を切って別れる」、永遠ではなく一瞬でもそれを切ってしまうということを意味しています。ハードカバーの方は、それに対して思い出すです。思い出すというのは、志向として永遠に近いと思うのです。
ありえないものを志向して、それが歪んでしまうことというのが、このエピソードで描かれていましたけど、その終わりとして描かれるのは、「きっと」を志向する指きりの方があってるのではないかと思いました。