暗闇にヤギを探して 3 (3) 穂史賀雅也

暗闇にヤギを探して〈3〉 (MF文庫J)

暗闇にヤギを探して〈3〉 (MF文庫J)

 

「記憶を探しているんです」
先輩は、ライオンと目が合ったうさぎみたいに、じっと僕を見つめた。
「……なるほど、ここって、草加くんが倒れていたところよね」
「そうです」

kimagureさんの暗闇にヤギを探して3の感想を見て、思うところがあったので。


記憶喪失を途中に持ってくる場合には、自分がどう思っていたかを考える、自分の足跡を辿るという効果があるのではないかと思います。
記憶喪失と自分の記憶を探すっていうのはセットですけど、記憶を探すことは記憶を失う前は自分がどんな人間で、誰とどう付き合っていて、何を考えていたかというのを改めて考え直すことでもあります。前半風子パートでは、風子が合人くんに告白するまでを描いているため、合人くんが風子に告白するという観点からはいろいろと足りてません。それを描くために、それまでを合人くん視点で描くということも可能といえば可能でしょうけど、そもそも風子パート自体が裏側なのでそれはやりづらいです。だから、記憶喪失によって擬似的に合人くんが風子に告白するまで、「事故にあう直前の自転車に乗って坂を下っていたときに持っていたもの」を語りなおしたのではないかと思います。


kimagureさんの言うとおり二巻までは先輩ルートよりだったので、風子の方に持ってくるのだったら、それを風子の側と合人くんの側の両面を描く必要があるために記憶喪失を使ったってところではないかと。


これだと、なんで風子に行ったかっていう回答にはならないですけど、思いつきなのでとりあえずこれくらいで。