桜蘭高校ホスト部  17話

最近、原作の方も全部見て、今回割と違う感じがしたので比較してみます。


原作は壁というものを軸にしているのに対し、アニメは二人で会話して戯れているなという感じです。


原作で贋作を見抜いたメインの理由はハルヒが冷たくされたからで、鏡夜の最後のセリフとしては

「さっきのおまえの理屈だと俺はおまえとの関係に精神的メリットを見出していることになるな」
「しかしまあ、面白い解釈だ」

となるんですが、ハルヒが鏡夜の行動原理を理解すると同時に、鏡夜の側からもハルヒに何らかの思いがあるからこそ、「そのもうひとつの壁の内側に きっともう足を踏み入れかけてる」となるんですよね。壁の内側に入るには、入ろうとすることと招くことの両方が必要ですから。


それに対してアニメでは、贋作のところでただお婆さんが騙されそうになっていたからで、ハルヒのためではなくなっていて、鏡夜との間にある壁という表現もほとんどなくなっています。
それで、会話のニュアンスの変更を見て見ると、鏡夜が自分のことをわざわざエゴイストと呼んでいたり、利益(原作ではメリット)について、原作では具体的には触れないのに対し、アニメではお互いの家の関係などの実益的なものであると言いますし、ハルヒも会長婦人だと分かっているはずはないと確信していながらも、「じゃあ、鏡夜先輩の利益ってなんなんですか?お金や名声?何か具体的に形のある実益?」と言ってみたりします。
アニメはこういう、割と大仰な、パフォーマティブな言い方がメインになっています。
アニメでは「よく分かりませんねえ。先輩がわざとエゴイストとして振舞うのは、実際エゴイストでない以上、違和感を感じます」と言ったりしてるんですけど、分からないとか、違和感を感じるとかは内容としてはどうでもよくて、ここで言おうとしてるのは鏡夜はエゴイストとして振舞っているけれど、本当はそうじゃないって分かりましたってことです。
それだったら原作のようにストレートに聞いてしまえばいいんですけど、そうしないのは、こういった回りくどい言い方でも伝わることに確信を持っているからです。言われたことそのものではなく、それを言うことの意味が分からなければならないので、お互いの信頼関係がなければできせん。
違和感を感じますの後に、ふっと笑って歩いていくとか、「それなりに興味深い感想」を交互に使いあうとか、こういう戯れを見るのは、なかなかに幸せでした。