オルフェの方舟―ブギーポップ・イントレランス 上遠野浩平


ブギーポップの世界では、登場人物は誰も超越的な位置に立つことを許されず、起こった事件に対してはっきりとした解決を示されないままであったり、自分の意思とは全く関係なく襲い掛かってくるものがあったりして個々の人たちは非常に無力です。
自意識がどうであっても、それによって世界の実際が動くわけではなく、自分にとって特別だと思っていたものが実際にはちゃんと理由のある、特別ではないことだったりします。


そんな中でブギーポップという存在だけが特別なものとして描かれるのですが、疎外されている普通の人間と特別なブギーポップという構図に対して、逆にその特別なブギーポップをそうでない普通の人間が自信を持って疎外し返してやるっていうのが、実にブギーポップっぽいなとか、そんなことを思いました。



追記
彼らは普通じゃないって言われればそうだと思いますけど、ブギーポップが一番上で、その一段下に彼らがいて、そのまた一段下に靖子とかがいるって感じではないかと思っています。
この作品では特別であるということそのものは、とりたてて肯定されていません。
一番下の決定的な出来事に出会うことのできない人々に対し特別であるところの彼らにしたところで、ああいう結末に至ってしまいますから。特別であるほど、むしろ非寛容的な立場にさらされるということなのかも。