ハサミ男 殊能将之

ハサミ男 (講談社文庫)

ハサミ男 (講談社文庫)

面白かったです。やっぱり解決編のあたりはすごかったですね。
トラウマについての話を読んだ後だったので、犯罪の動機とかそれを推し量ることなんかについての話も非常に面白く読むことができましたし。


興味深かったのは397pから数ページにわたる「何故人を殺してはいけないか」という話です。これは、なぜこういった話を僕らが読むことができるのかということに繋がってくるので。小説は文章だけで、どこまで細かく描写されるかという問題もあってそういった不快感をほとんど感じないですから。
というか、p398の医師の発言(一応続きを読むにしておきます)の「きみ」を読者と読み替えても、そこだけならなんか通じそうな気が。
いろいろ考えちゃいますねえ。

少女を絞め殺したときに感じる不快感を、きみは理解できない。鬱血して赤黒く膨れ上がった顔を、きみは見ない。のどの奥から押し出されたかすかなうめき声を、きみは聞かない。ハサミの先端が肉に食い込み、硬い部分に当たって止まる感触を、きみは感じない