春待ちの姫君たち 友桐夏


白い花の舞い散る時間友桐夏さんが描くリリカルミステリー第二段


不安定な少女の一人称によってこの作品世界自体が非常に不安定なものとしての印象を与え、途中に挟まれる劇中劇もあり、いい意味で非現実的な色合いをしています。


こういうのって、小説だからこそって感じがします。
読者に与えられる情報は全て語り手の影響を受けていてそれ以外の情報が無いので、ある程度客観的な世界というよりは語り手のフィルターを通した世界という印象を受けます。
そのため、非現実的な設定などはほとんど無いにもかかわらず、その語りによってこの世界を特徴付けているように思えるんですよね。


それまでの人間関係がなかなか上手くいかずに重いものになっていただけに、タイトルにあるような最後の「春」も非常に良かったです。



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