サマー/タイム/トラベラー1  新城カズマ(ISBN:4150307458)

はてな年間100冊読書クラブ 034


一人の女の子が時をかけたのをきっかけに、彼女の友人たちはそれを解明するためにプロジェクトを開始する


この小説のプロジェクトという考え方が面白いです

つまり─響子のいう<プロジェクト>は、絶対に実用的な効果があっちゃいけないってことだ。
非建設的な努力。
それが本質だ。


響子が暇だからといって左手で文字を書く練習をしていたら上手くなってしまって、たいていの筆跡は真似できるようになってしまった
そのことについて仲間が便利だと言ったら、彼女は本気で怒ったというエピソードがあったりするのですが、無駄なものを無駄なものとして楽しむっていうのがいいです。


実用的な意味がないからこそ、思う存分努力をし、楽しむことができる
こういうもの意味のないことを楽しむっていうのは余裕ってことですよね
意味を求めるからにはそれを達成しなければならないという強迫観念みたいなものがありますけど、そもそも「実用的な効果があっちゃいけな」くて義務感がないから、却って好きなだけ努力をすることができます
真面目にかつ、楽しんでというスタイルはすごく面白そうです


と、本編とはあんまり関係ないことを話した気がしますが、この作品で彼らは、プロジェクトという時間移動という現象の実験や、タイムトラベル作品に現れる思想などについてさまざまなことを考えたり行ったりします
そして、そんなプロジェクトを行う彼らを取り巻くできごとや環境、時間移動というものについての思いなどを描きつつ物語は進んでいきます
この巻は上巻なので、そんな彼らがどこに行き着くのかが非常に気になり、また楽しみです