しずるさんと底なし密室たち 上遠野浩平 イラスト 椋本夏夜

この小説の楽しみかたって、ちょっとマリみての楽しみ方に似ているかもしれない
キーワードは内面ということで

マリみてでは、SFもファンタジーもなく、多様な人間関係の中で女の子たちが日常の出来事に一喜一憂するという、傍からみれば何でもないようなことであったりするものを題材とした内面の物語が紡がれるが、この物語でも殺人と言う外面の問題を扱いながらも、あくまでそれは内面にとどまる
しずるさんはもちろん、よーちゃんも実際の殺害現場に遭遇することはない
そして、事件に直接関与する必要が出てきたときでさえ、実際に動くのはよーちゃんの家の人である
事件のことを調べに現場までよーちゃんは赴くが、やはりここでも殺人や死体そのものと出会うことはないのだ
つまりこれは一見殺人と言う事件、外面を扱いながら、そこにある「ごまかし」に触れ、事件の謎を解くことによりいろいろなことを感じると言う、よーちゃんやしずるさんの内面の物語ではないだろうか