電波的な彼女 ~幸福ゲーム~  片山憲太郎  

電波的な彼女 ~幸福ゲーム~ (スーパーダッシュ文庫)

電波的な彼女 ~幸福ゲーム~ (スーパーダッシュ文庫)

そもそも「幸せ」とは何だろうか?
今の自分にとっての幸せは何かと考えると、何も思いつかない。昔は、上手いものを食べたり、暖かい布団で寝たり、母親と一緒にいたり、そんなことで充分幸せだった。
(中略)
でも、とジュウは思う。やはり人間が求める幸せというのは、幼い頃に感じたあれが本質であるような気がする。年を経ても、結局、同じものを求めているのではないか。


ということで、幸せについての話です。
今木さんの言ったことを僕なりに解釈するならそういうことで、例えば幸福ゲームでは、

優しくも鮮烈な声で、雨は言う。
「日常と非日常は、繋がっています。同じものなのです。その差は、主観的なものでしかない。大丈夫ですよ、ジュウ様。あなたは、こんなことに負けはしない」
ジュウはその言葉にではなく、彼女の声に納得した。声を聞くだけで納得した。

という文章があります。ここでは、言葉ではなく、声に納得したと書かれていて、つまりそれは、誰かの存在を感じるということではないかと思います。言葉によるものであったり、考えたりするのではなくて、幼い頃にただ「感じた」ようなもの。


上のシーンなんかでは、一人で考えに考えてどうしようもなくなっている訳ですが、そこで誰かの存在を感じることによって、救われる(助けてもらうという意味ではなくて、誰かがそこにいることによって、それから本人が負けてしまわないことができるという意味での)のではないかなと。
これもまた、作中に出てくるような錯覚であるのかもしれないですが、いろいろと思わされます。