渇きの海 アーサー・C・クラーク(ISBN:4150115249)

はてな年間100冊読書クラブ 032


月で観光船が塵でできた「渇きの海」に沈没してしまい、それを救出するまでを描いたSFです
沈没したという事実自体が伝わらないため、まず探索することから始まり、外部との連絡がつかない不安定な状況の中でどうやって乗客を落ち着かせるかということや、船が沈んでいるという事実が分かった後、それを救出するのにどうしたらよいかなど、解決する問題は様々であり、その解決までの試行錯誤や繋がり方が面白かったです


個人的に印象に残ったのは、沈没し、隔絶された空間から発見されて通信ができるようになった後(まだ中盤くらい)に、

あの心温まる連帯感は、すでに一場の夢と消えていた。
(中略)
彼らの生は、ふたたび個々の目的や野心の中へと分散してしまっていた。
大海が雨滴をのみこむがごとく、人類はふたたび彼らをのみこんでしまったのである。

というところです
人類というより多くの人と繋がったという認識により、逆に個人性を強めるというのが逆説的で面白いと思いました