それ散る

全員クリアしたので、全体的な感想
雪村シナリオについては下
http://d.hatena.ne.jp/simula/20050329/p1


ゲームデザインが結構気になりました。ONEと似ていると思う人は多いと思うのですが、ONEは恋愛をしつつ永遠の世界を向いていたのに対し、このゲームの場合はあのファンタジー部分がほぼそのまま恋愛を向いていました。言い換えると、ONEの場合は恋愛というものを経験しつつ、それに対してそれとはまた別に別れというものがあり、それが意識されるというものでしたが、それ散るの場合が恋愛そのものが別れを招くものとして描かれています。だからファンタジー部に恋愛としての進行度までほぼ直接的に描写することになり、シナリオとしての自由度が非常に低くなっていました。
(ONEは、永遠の世界に引き寄せられるというのは全シナリオであまり変わらないけれど、それぞれのヒロインとの感情や、親密度はそういった共通部分に左右されませんでした)
そのため、場合によっては非常におかしなシーンになっていた気がします。五つのシナリオに対し同じレベルの恋愛感情運びをするのは、上手くいったとしても退屈になるし、ばらばらになるとこのシーンが噛み合いません。このゲームは、どっちつかずだった気がします。


とはいえ、このゲームの魅力はは日常、あるいは、ほんの些細なセリフ、行動だと思います。
主人公との小さい頃のひどい思い出をとても大切なものとしていたり、主人公に学校や家の近くで近づくなと冗談半分で言われたセリフを本気にし、馬鹿みたいにそれを守っていた雪村から始まり、
小さい頃のちょっとした思い出をずっと大切に思っていたかぐら
恋なんて勘違いに過ぎないと言いながら、それでも主人公を好きになったつばさ
今の幸せなんか知らず寂しく暮らすのが怖いという青葉
「恋をするとね、何気ない一言が宝石みたいに光り輝くんだよ」なんて、恥ずかしいセリフを言ったこだま
などなど
ほかにもたくさんありますが。


そういった、傍から見れば、そんなものを信じているなんて馬鹿じゃないか、と思われてしまうような、幻想と言ってもいいようなものを、そういったものだと知りつつも大切に思うこと、という感覚は好きだし、大切にしたいものだと思うのです。
「何気ない日常、馬鹿馬鹿しいとすら思えてしまうようなことの中にある、本当に大切なもの」
このゲームはそういったことを描いていたのだと思います。