ななつのこ 加納朋子

ななつのこ (創元推理文庫)

ななつのこ (創元推理文庫)

いつだって、どこだって、謎はすぐ近くにあったのです
何もスフィンクスの深遠な謎などではなくても、例えばどうしてリンゴは落ちるのか、
どうしてカラスは鳴くのか、そんなささやかで、
だけど本当は大切な謎はいくらでも日常に溢れていて、
そして誰かが答えてくれるのを待っていたのです
ななつのこ 本文より」

この作品は、七つの短編に構成され、それぞれがこの作品中にでてくる「ななつのこ」という本の短編に対応している
ななつのこ」(作中の本)に出てくる主人公は、はやてという少年であり、彼の日常におけるちょっとした謎をあやめさんと言う女の人が解き明かす形で物語は進んでいく
それは、日常を通して描かれる小さな少年の暖かな成長物語である

ヒロインは、その「ななつのこ」を読んで、その作者にファンレターを送り、それ以後、日常における謎を手紙で送り、作者によりその謎が解かれていく
それはあたかも、はやてとあやめさんのような関係である
その謎は、殺人や犯罪と言った実際には多くの人は、直接経験することのない非日常のものではなく、どこにでもありそうな日常から生まれてくる

謎は何も、明らかな非日常にだけあるのではない
日常でもちょっと回りを見渡せば、いろいろなところにあるのだ
ということを優しく描いた作品だと思う